Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
こうした蘇生の思いを抱きながら、しかも岸本には妙に落着きの無い心持の日が続いた。旅に来て彼は何一つ贅沢を願おうではなかった。唯、たましいを落着けることのみを願った。彼にはその何よりも肝要なものが得られなかった。何故東京浅草の方にあった書斎を移して持って来たような心で、二年でも三年でも巴里の客舎に暮せないのか、それは彼には言うことが出来なかった。歯癢い心持で、自分の下宿を出て見た。産科病院前の並木街にはプラタアヌの幹や枝の影が歩道の上に落ちていた。その輝いた日あたりの中を教師に連れられて通る小学校の生徒の群があった。遠足にでも出掛けるらしい仏蘭西の少年等はいずれもめずらしそうに岸本の顔を見て通った。その無邪気な子供等を見送っていると、岸本の心は遠く国の方にいる泉太や繁の方へ行った。その年から繁も兄と連立って学校へ通うようになったかと思いやった。
天文台の前へ歩いて行って見た。そこにも男や女の児が静かな樹の下で遊んでいた。高いマロニエの枝の上に白く咲く花も盛りの時で、あだかも隠れた「春」の舞踏に向って燭台をさし延べたかのように見えていた。
前の年にマルセエユの港に着いて初めて欧羅巴の土を踏んだ頃の記憶が復た新しく岸本の胸に帰って来た。