Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
八十
八十
仏蘭西を捨てて日本の方へ行ってしまった老婦人の姪の噂が出た。茶の会とは言ってもその日は極く内輪のものだけの集りらしく、紅茶の茶碗を手にした人達があちこちの椅子に腰掛けて思い思いに話していた。その中で岸本は老婦人の口から、東京の方にあるマドマゼエルの結婚の話を聞いた。
老婦人は心配顔に、
「あの手紙を持って来て御覧」
と細君に言った。細君は家の正面にある石階を上って行って、日本から来た手紙をそこへ持って来た。
「お母さん、滝という方ですよ」と細君はマドマゼエルの手紙を見て言った。
「岸本さんは滝さんという美術家を御存じですか」と老婦人が訊いた。
「滝という苗字の美術家なら二人あることは知ってますが、しかし私は直接にはよく知りません」
この岸本の答は一層老婦人を不安にしたらしかった。
「岸本さんですらよくは御存じないと仰る」
と老婦人は細君と眼を見合せて、姪が結婚するという美術家はどういう日本人であろうという意を通わせた。仏蘭西の方に居てマドマゼエルの為にほんとうに心配している人は、何と言ってもこの叔母さんらしかった。その時岸本は、「姪がああして日本の方へ行ってしまったのは、私が悪いのだ、私の落度だ、と言って皆が私を責めます」