Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
九十九
そこは牧野とも一緒によく休みに来て、生っている桃を枝から直ぐにもぎ取っては味ったり、土の香気を嗅ぎながら歩き廻ったりするところであった。最早十月下旬の季節が来ていた。枝にある仏蘭西の青梨は薄紅く色づいたのが沢山生り下っていたばかりでは無く、どうかすると熟した果実は秋風に揺れて、まるで石でも落ちるように彼の足許へ落ちるのもあった。
その畠は一方は町はずれの細い抜道に接し、他の一方は田舎風の赤い瓦屋根の見える隣家の裏庭に続いていた。岸本は木の靴なぞを穿いて通る人の足音を一方の抜道の方に聞き、野菜畠の中から伝わって来る耕作の鍬の音を一方の裏庭の方に聞きながら、桃や梨の樹の間を歩いて新しい果実の香気を嗅ぎ廻った。あだかも成熟した樹木の生命を胸一ぱいに自分の身に受納れようとするかのように。
オート・ヴィエンヌの秋は何となく柔かな新しい心を岸本に起させた。彼は長い年月の間ほとほと失いかけていた生活の興味をすら回復した。仮令罪過は依然として彼の内部に生きているようなものであっても、彼はいくらか柔かな心でもって、それに対うことが出来るように成った。
九十九
四十日も要って来る郵便物がボツボツ届くように成ってから、岸本は戦時以来全く絶え果てた故国の消息をリモオジュの田舎に居て知る事が出来た。