Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
その家から岸本の母は嫁いて来た。義雄兄はまた幼少の時から貰われて行ってその母方の家を継いだ。義雄兄の養父――節子から言えば彼女の祖父さんは、岸本が母の実の兄にあたっていた。岸本が父母の膝下を離れ、郷里の家を辞して、東京に遊学する身となったのは漸く九歳の時であった。十三歳の時には東京の方に居て父の死を聞いた。彼は父の側に居て暮した月日の短かったばかりでなく、母のいつくしみを受ける間もまた短かった。彼がしみじみ母と一緒に東京で暮して見たのは艱難な青年時代が来た頃であって、しかも僅かに二年ほどしか続かなかった。彼は仙台の方へ行っている間に母の死を聞いた。
これほど岸本は父のことに就いて幼い時分の記憶しか有たなかった。四十四歳の今になって、もう一度その人の方へ旅の心が帰って行くということすら不思議のように思われた。半生を通して繞りに繞った憂鬱――言うことも為すことも考えることも皆そこから起って来ているかのような、あの名のつけようの無い、原因の無い憂鬱が早くも青年時代の始まる頃から自分の身にやって来たことを話して、それを聞いて貰えると思う人も、父であった。