Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんせい

新生

島崎 藤村

Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme

Aozora Bunko

百二十八

親戚や友人の助言にも素直に耳を傾けて、後妻を迎える気にも成ったであろう。信の無い心――それが彼の堕ちて行った深い深い淵であった。失望に失望を重ねた結果であった。そこから孤独も生れた。退屈も生れた。女というものの考え方なぞも実にそこから壊れて来た。

旅に来て、彼は姪からかずかずの手紙を受取った。いかに節子が彼女の小さな胸を展げて見せるような言葉を書いてよこそうとも、彼にはそれを信ずる心は持てなかった。

百二十八

ソクラテスの死をあらわした例の古い銅版画の掛った壁を後方にして、寝台に近く岸本は腰掛けた。そして自分の半生を思い続けた。

「情熱あるものといえども、真にその情熱を寄すべき人に遇うことは難い」

これは岸本が春待つ旅の宿で故国の新聞紙への便りの端に書きつけて見た述懐の言葉であった。夜の九時と言えば窓の外もひっそりとして、往来の人の靴音も稀にしか聞えないような戦時らしい空気の中で、岸本は自分で書いた言葉を繰返して見た。漸く八歳の頃に既に激しい初恋を知ったほどの性分に生れつきながら、異性というものを信ずることも出来なくなってしまったような半生の矛盾を考えて見た。