Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
三十七
これでも自分は国へ帰って来たのかしらん、そう考えた時は茫然としてしまった。
三十七
岸本は家の近くに二間ある二階を借りた。九月のはじめからそこを仮の書斎として、食事の時と寝泊りする時とには家の方へ通った。彼の子供の中には毎晩よく眠っているのを呼び起さねば成らない習慣のついたものがあった。彼はその子供を呼び起す役目が義雄兄の家族に取って可成の苦痛であったことを発見した。どうしてもこれは他人の手を煩わすべきことで無い。その考えから彼は北向の部屋に親子三人枕を並べ、大きくなれば自然に治る時もあるという少年時代の習慣のついた子供を側に寝かせて、なるべく嫂達に迷惑を掛けまいとした。丁度義雄兄は郷里の方へ出掛けて留守の時であった。節子は叔父の骨の折れるのを見兼ねたかして、子供を呼び起しに来てくれたことがあった。その日から両人の間の縒りが戻ってしまった。
例の二階の方へ行く度に、時々岸本の頭脳の内はシーンとしてしまった。同時に彼の耳の底にはこういう声が聞えた。
「お前はほんとうに人を憐んだことがあるか。もう一度夜明を待受けるようにして旅から帰って来たお前の心は全体の人の上に向っても、お前の直ぐ隣に居る人の上には向わないのか。