Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
叔父とか姪とかの普通の人情、普通の道徳の見地から、ややもすれば冷い苛酷な眼を向けようとするものに対して、彼の執ろうとする道は小さな反抗心を捨てるにあった。最後の勝利なぞということはどうでも可いと思っていた。彼は勝つとか負けるとかを自分の念頭にすら置いていなかった。節子の書いてよこした手紙の文句は短くて、彼女の言おうとする意味はいろいろに取れ易くもあったが、しかし彼が節子と共に待受けたのは決して決して世にいう幸福な春ではなかった。世の幸福も捨てはてた貧しいものにのみ心の富を持来そうとして訪れて来るような春であった。
やがて新しい年がめぐって来た。節子は叔父の心配して造ってやったコートに身を包んで遠路を通って来るように成った。それまで彼女は激しい季候を防ぐものもなしに、よく途中から寒い雨に濡れて来て、その可傷しさが岸本には見ていられなかったからで。
「コートなんかは無くても済むものだなんて、お父さんが喧しいことを言いますからね――まだお母さんだけにしか見せません」
と言いながら、節子は玄関に畳んで置いてあった質素な感じのする新しいコートを奥の部屋まで持って来て、岸本の見ている前でその灰色のやつに袖を通したり、玉子色の内紐を結んで見せたりした。