Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
「自分は何故こんなに奥深く思いを秘めて置かなければ成らないのか。もうちっともそんな必要は無くなった。それなのに、胸に溢れるほどの思いもそれを言いあらわすべき言葉を奪われてしまった人のように、どうしても外にあらわすことが出来ない。長い長い沈黙――恐ろしいものだ、口業を修めていたかのような私は今までのとおりに何故黙ってばかりいるのか。私は話したい、そして、ほんとに聞いて下さるではないか。あの厚い氷が暖かい春の光に逢って次第に溶けて行くように、私の唇もきっと溶けて行くにちがいない。早く早く自由に思いのままを話すことが出来たら、私はどんなに嬉しかろう」
こう節子はその手帳のはじめに鉛筆で書きつけて、それから難破船の乗組員という心持が随分長く続いたが、今はもう自分の多病なことも何もかも忘れて君と共に生きたいと思うと書いてあった。彼女はまた昔の人の遺した歌になぞらえて、上野の杜にからすの啼かない日はあっても君を恋しく思わない日はないとも書いてあった。
七十三
三月に入って、根岸の姪からは大阪の方へ移り住もうとしているという通知があった。まだ岸本は書きかけた旅行記の一部を急いでいる頃であったが、暇乞いかたがた訪ねて来た愛子を高輪の家に迎えた。