Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
五月に入っても未だ彼女は通って来ていて、その月の末までは顔を見せた。ほんとに好い事があるから頼みつけの米屋へ電話を掛けてくれ、そうしたらお伺いする、何も何もお目に掛った上でという意味の手紙をよこした翌日、彼女はやって来た。彼女のいう「ほんとに好い事」とは、例の女医から自分の子供の写真を手に入れたと言って、それを岸本の許へ見せに持って来たのであった。その時、岸本は初めて親夫という子供の姿を見た。それを節子と一緒に見た。その子供のおもざしは母親によく似ていて、殊に眼付なぞは節子にそっくりで、幼い遊び友達と二人で写真に撮れていた。「お前はもう子供を欲しいとは思わないか」そんな串談の中にも、岸本は節子の独身で居るのを憫む心から言って見た時、彼女は首を振って、「もう沢山、このうえ子供があったら私は死んでしまいますよ」と真面目顔に答えたこともあった。それが彼女の通って来た最後の時であった。
食後に、岸本は節子から預かって置いた子供の写真を取出しに行って見た。罪のない幼いものの存在が今はハッキリと岸本の父らしい意識に上るように成った。
百二十三
庭先にふりそそぐ雨の音を聴きながら、岸本は更に思いつづけた。