Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
二十九
家でも皆寝てしまったらしい。そう思いながら、岸本は門の戸を叩いた。
「叔父さんですか」
という節子の声がして、やがて戸の掛金を内からはずしてくれる音のする頃は、まだ岸本は酒の酔が醒めなかった。
「まあ、叔父さんにはめずらしい」
と節子は驚いたように叔父を見て言った。
岸本は自分の部屋へ行ってからも、胸の中に湧き上って来る感動を制えることが出来なかった。丁度節子は酔っている叔父のために冷水を用意して来た。岸本は何事も知らずにいる姪にまで自分の心持を分けずにいられなかった。
「可哀そうな娘だなあ」
思わずそれを言って、彼ゆえに傷ついた小鳥のような節子を堅く抱きしめた。
「好い事がある。まあ明日話して聞かせる」
その岸本の言葉を聞くと、節子は何がなしに胸が込上げて来たという風で、しばらく壁の側に顔を押えながら立っていた。とめども無く流れて来るような彼女の暗い涙は酔っている岸本の耳にも聞えた。
二十九
朝が来て見ると、平素はそれほど気もつかずにいた書斎の内の汚れが酷く岸本の眼についた。彼は長く労作の場所とした二階の部屋を歩いて見た。何一つとしてそこには澱み果てていないものは無かった。