Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
三十五
女の子にもして見たいようなその長い袖や、あまえるように傾げたその首や、哀れげに子役らしいその科白廻しは、悪戯ざかりの泉太や繁とは似てもつかないようなものばかりであった。でも、岸本は妙に心を誘われた。彼の胸の中は国に残して置いて行こうとする自分の子供等のことで満たされるように成った。熱い涙がその時絶間なしに岸本の頬を伝って流れて来た。彼は舞台の方を見ていることも出来なかった。座にも耐えられなかった。人を避けて長い廊下へ出て見ると、そこには幾つかの並んだ薄暗い窓があった。彼はその窓の一つの方へ行って、激しく泣いた。
三十五
岸本は出来るだけ旅の支度を急ごうとした。漸く家の周囲の狭い廂間なぞに草の芽を見る頃に成って、引越の準備をするまでに漕ぎ付けることが出来た。節子は暇さえあれば炬燵に齧りついて、丁度巣に隠れる鳥のように、勝手に近い小座敷に籠ってばかりいるような人に成った。一月は一月より眼に見えないものの成長から苦しめられて行く彼女の様子が岸本にもよく感じられた。彼の心が焦れば焦るほど、延びることを待っていられないような眼に見えないものは意地の悪いほど無遠慮な勢いを示して来た。