Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
――これはちょうど、弁天通りの外人向きな商店の窓によくある洋妾の絵そのままな姿態である。
「…………」
「…………」
この二人の沈黙は、今、旗岡巡査が一度ここを出て、窓から屋外の者へ、顔を見せて言葉を交わした、その前からの継続なのであった。――だから、彼がここをノックしてから、もう十何分か経過しているわけだった。
「海後さん、まだよござんすか」
女は、煙草の灰を見ながらいった。
旗岡巡査は、頷いていった。
「まだかまわんです。ゆっくりお吸いなさい」
「縄をかけられればもう好きな煙草も吸えませんからね……。でも、慾をいえば限りがない」
深い嘆息をつきながら女は独り語のように――
「わたし程、不倖せな者はないと今日まで思っていたけれど、今夜の――たった今、わたしにも一つの倖せはあったような気がして来た。……海後さんに会えようなどとは、夢にも思っていなかったのに、その海後さんの手で縛られるなんて――やっぱり私のような女でも、何か、前世で一つぐらいは善い事をした功徳があるのかも知れない」
「…………」
「あんまり吃驚しちまって、何だか、夢みたいな気がして仕様がない。あたしを縛りに来たお巡査さんが、海後さんだったなんて、――ああ、これで死んでもいい!」