Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
紅梅を繞って
一
……しかし、参るとなれば、五年七年の遊歴は覚悟いたさねばなりませぬが、その間、お父上の身辺には」
「右門がおる。右門を残しておこう。病弱でもあるし……」
十兵衛は横にいる弟を見た。父の眼も彼に注がれていた。右門は先刻から一言も云わず、ただ俯向いて畏まっていた。
父は、四人の兄弟中で、誰よりもこの右門が不憫でならないらしかった。そして最も好きでもあった。十兵衛のように、又十郎のように、右門は逆らったり心配させたりした事がないからである。
紅梅を繞って
一
又十郎がうんと云わないので、父の但馬守へする返答は遅れていた。けれど、十兵衛自身は廻国に出る決心をしていたし、又十郎の我儘も、今度は通させないつもりで肚に畳んでいた。
中庭の坪には、芭蕉の葉は落ちたが紅梅が咲いていた。
その中庭へ向いている三つの窓の、それぞれの部屋に、今日はめずらしく、兄弟三人とも、机に倚っていた。
廂越しに、春の雲が麗しい。
又十郎の部屋の窓は、半分ほど開いている。向う側の十兵衛の部屋の窓は、いっぱい開けひろげてあった。
独り閉め籠んでいるのは、四男の右門の部屋だけである。
(――怒っているにちがいない。