Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
鮎川の仁介の郡内部屋へ泊ったのが、ちょうど、去年の寒い頃で、お稲は、その時、奪った女だった。――世話になっている仁介の眼をしのんで、用心棒の賛之丞と、よくない恋を盗んでいるのを知って、自分が、無態に、力ずくで、連れ出してしまった淫婦なのである。
(賛之丞の奴、あとで、どんなにベソを掻いているだろう)
と、想像して、かれは、かれ特有な執ッこい復讐感を満足させると共に、一面にはお稲の若さを、淫婦性を、思うさま、もてあそんで来たのであったが、子どもが――と女に、からだの異状を告げられて初めて、ぎょッと寒いものを感じた。
が――追いついた沙汰ではない。悔んでみたところで、こればかりは、安成三五兵衛にも、どうにもならない。
悪縁だ。悪縁だ。
江戸に知己がある。せめて、子どもの育つまで、そこにでも――と女にいって、一年ばかり潜っていた信州路から、江戸の空へ、さまよい出た途中なのである。
「ね、お前さん――」
乳を、ふくませながら、お稲はくどく――神経質に、男の気ぶりを見つめて、
「飽いたんでしょう、もう私に。――でも私は、死ぬまで離れやしないからね」
「うるせえ」
と、三五兵衛は、癇をあげて、