Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
惨虐・野の獣
――行こう外記、参ろう」
「何処へです、何処へです」
「役所へは、無論、不面目。お役を辞して雲霧に縄を打つまで。――それよりほか、わしら父子のとる道はない。あっ伜、もうそこまで、炎の舌が這ってきた。父の肩にしっかりと縋れッ」
惨虐・野の獣
朝霧に、夕霧に、一日まし、秋は蕭殺と、恵那の高原から、人間の通う峠へも下りてくる。
もう一年余りは過ぎた。――先はまだ幾年歩かなければならない道だろう。職の責めを負って、役目を辞し、突然江戸表から姿を消した高梨小藤次と外記父子の旅は――
「足助村かの、中之御所かの。上手な眼医者が住んでいると、麓で聞いたが」
恵那峠の茶屋で、休んだついでに、小藤次が訊ねてみた。
土間炉で、小鳥の肉を、串にさして、焙っていた亭主が、
「さあての?」
と、考えていると、でっぷり肥えた女房らしいのが、
「いつもの、針屋が来たら、分るが」
と、口を出した。
「そうだ、あの針売りなら、ここらから、岡崎辺りまで、しょッ中、小まめに歩いているので、聞きかじっているかも知れぬ」
と呟いて、床几から外へ向いて、背を並べている二人の背へ、
「お眼が悪いと仰っしゃるのは、御子息様で」