Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
心境・ふたおもて
それが自分の物かと、獣じみた姿を考えると、早くこんな腐れ損いは、小塚ッ原で火焙りにして貰ったら、定めし、さっぱりするだろうと思った。
横になるまでは、眠くって眠くって堪らなかったが、木枕を、首にあてると、ぴーんと妙に、神経は冴え返って、
「ええ、また今夜も」
と、寝返りを打った。そして、
「――忌々しい三味線だな」
と、雲霧は眠られぬ眼を開いて、牢天井の濃い闇を睨んだ。
毎晩聞える、遠い三味線。
撥の音が、大川に、ひびくせいか、ばかに近く聞えるのだった。卯平の話によると中洲に、仮宅ができたので、四季亭とか、花明庵とかいう茶屋が、ひどく繁昌するということだった。
娑婆の灯が、瞼にちらつく。――白い、女の顔、琥珀の酒のかおり。
「ああ、俺ア、まだ二十一だった……」
悶えたものの、どうしようもない。
心境・ふたおもて
「雲霧だ、雲霧だ」
「五人組の義賊の親分――」
「若いなあ」
「いい男だ。情けぶかい顔をしてら。俺ッちには、救いの神だのに」
「世直しの仁左衛門っ――」
軍鶏籠が、永代橋へかかるころから、差立ての列は、そこらに、群れをなしていた立ン坊だの、屑屋だの、軽子だの、乞食だの、まるで生ける餓鬼草紙みたいな、臭い人種に囲まれて、