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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

三

「――無事な所まで、此方の船で」

「それは、あまり」

「いや……」と、兵部は立って、

「内儀」

「はい。今――お提灯を」

「足もとは、水明り、それには及ばん。やがて、万字屋から、家来どもが、引揚げてくるであろうが、此方は、船で先に下屋敷へ――と、よいか、最前の、言伝てを」

「覚えておりまする」

「そして……」

と、自分の後ろから、小袖を、女被衣にして、忍びやかに、尾いてくる者を顎で指して、

「夢――人には告げるな。――わしの浮気を」

三

両河岸は、霜が白い。

灯さない屋形船が一艘、氷をすべるように、大川を下って行った。

「――寒かろう、はいってはどうだ」

中の兵部は、こう、外へ声をかけた。

小袖をかぶったまま、鷺のように、舳に屈んでいた男は、振り向いた弾みに、刀の鐺を、かたんと、屋形の角に音をさせて、

「何、ここで……。すぐ其処の百本杭あたりで、降ろして貰おう」

「まあ、そう申すな、炬燵の火も、ちょうどよい加減、酒も温まっておる。はいって、一献やってはどうじゃ――河千鳥の声をさかなに」

それを、兵部の独り語のように、外の男は、そら耳にうけて、じっと、暗い川波を見つめていたが、