Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
四
「不義を見つけられて、居直る所存だな」
と、罵詈した。
あざ笑って、
「てめえは、まだ、女を知らぬな。そう野暮に、棘立つものじゃない。俺の聞きたいという一言は、いつぞやの返答。――どうしても、嫌か。――千坂兵部殿の苦衷を買って、吉良家へ行ってやる気はないか」
「賢明人の御家老様が、何で、おのれ如き素浪人に、そんな大事なお打明けなさるものか。よしまた、真であるにもせよ。丈八郎には上杉家の藩君がある。――ばかなッ。脱藩して吉良殿の付人に、身売りなどとは、思いよらぬ沙汰だ」
「では、どうあっても、嫌か」
「とっとと、この米沢から退去すればよし、いつまでも、うろついていると、命はないぞ」
「待てっ。――俺のいう事を先にいうな。命がないぞとは、こッちの切り札。千坂殿の密策を聞かしたからには」
立つ――同時に、
「丈八郎、命はもらった」
と、鞘はうしろに飛ぶ、刀身は前に、そして、一角のからだは畳一枚、踏み出していた。
四
風を切って――横に。
ばすっと、丈八郎が一角の出ばなを薙いだ。
「あっッ……兄様っ」
「お信、あぶない」
「やめて! やめて!」
「ええ、邪魔」
と、妹をつき倒して。