Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

増長天王

山目付

山目付

こんな奥深い峡谷は、町から思うと寒い筈だが、案外冷たい風もなく、南勾配を選って山歩きをしていると草萌頃のむしむしとする地息に、毛の根が痒くなる程な汗を覚える。

天明二年の春さきである。

木の芽の色、玲瓏な空、もえる陽炎、まことに春らしい山村の春。

肥前鍋島家の役人、山目付の鈴木杢之進という色の黒い侍、手に寒竹の杖をもち、日当たりのいい灌木の傾斜を、ノソリ、ガサリ、と歩いている。

「どうも、さっぱり面白くないな」

といわんばかりな顔つきで、恰好な場所を見つけると、ドッカリ山芝へ腰をおろしてしまった。

膝を抱えると杢之進、日向思案に落ちこんで、山目付とは、何たる御苦労なしな役目だろうと、今さららしく、退屈の不平を数えた。

しかし、初めは城下詰の俗役をいとって、われから望んだ役目なのだ。が、さて、やってみると、毎日、皿山からこの大川内の山一帯を、ガサリ、ノソリとあるいているだけの商売で、他国から御用窯の秘法を盗みにくる奴もなければ、品物を密売する悪人もない。みな佐賀のほこり、御用焼きの色鍋島を克明に制作している、善良なる細工人ばかりの山だ。

同時に、山目付の十手や大小も飾り物同様になってあるくかがしに過ぎない訳にもなる。