Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
七
と、手を打ちかけると、
「おッと、もう一枚」
と、札が出た。
「ム、これやあ高え……」と、つぶやいて、
「只今のは、二番札で。これが落札になりやした。――百両!」
(え、百両)
無数の眼が、きょろきょろした。そして、勘三のくちびるに、神経をすましていると、
「落札、百両、百両。――田無村の百之介様」
と、たかく読み上げた。
「えっ、百だって」
「あの鍛冶屋の百か? ……。何かの、間違いだろう、まさか」
札元の顔役たちは、こういって、迷った。思いきった値に、競られたのはいいが、悪戯か、間違いかと、不安を感じだして、
「二番札の方も、少々、お待ちを」
と、あわてて、どなった。
七
さいごの呼び上げを聞くと、群衆のなかに交じっていた百は、転ぶように、大楽寺の山門を、駈けだして、
「七兵衛さん! 七兵衛さん!」
松の蔭から、黒い人影が、
「ここじゃ、ここじゃ。どうした?」
「――落ちた。さ、貸してくれ百両」
「貸してくれって、ただは貸せねえよ。ゆうべも、話したとおり」
「だから、おめえの書いた証文へ、判を捺すよ。判も、ここに持って来ている」
「じゃ、家だけでなく、抵当物は、地面、造作、家財、仕事場道具一切」