Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
醤油仏
一
一
五月雨は人を殺す? ……
人入れ渡世の銅鑼屋の亀さんの部屋にいる、日傭取の人足達も、七人が七人とも雨で、十日も仕事にあぶれて、みんな婆羅門の行者みたいに目を凹ましていた。
左次郎は隅っこに寝ていた。
うすい蒲団へ柏餅にくるまって、気の小さい目をしながら、みんなの馬鹿話を聞いていると、何時までも飽きない気がする。
話というと、この部屋では、色気と食い気よりほかになく、就中、十日も仕事がなくなっている時は、食い気の方の話に花が咲いて、勘、竹、由、丑、六、三公、みんな胃袋そのもののような顔をして、
「馬鹿ア言ってやがら、化物じゃあるめえし、一人で蕎麦切三十ぱいに笹屋の鯖ずしを四十五なんて、食える理窟があるもんか」
「いや、食おうと思や、食えるさ」
「命がけだって食えねえ」
「なに食える」
「食えねえ」
と、食い意地の張った話から、果ては、賭食いのことで唾を飛ばし合っている様子だった。
すると、三公が言い出した。
「おれの国にゃ、蜜柑を一箱、食えるか、食えるもんかで、賭をした奴があったっけ」
「蜜柑の一箱ぐらいなら、おれだって、今すぐ此処で食って見せる」
「皮も箱も縄も、きれいに食ってしまうんだぜ」