Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
八
「やるからには大丈夫です。だが、仙吉のやつは、まだ何とも言って来ませんか」
「三五兵衛のやつが、まだ充分に寝つかないのだろう。その方は今お稲さんが見に行っているから、皆は、鯉口を切ってじっと鳴りをしずめていることだ。卑怯なまねをしたやつは、あとで承知しねえから言い渡しておくがいいぞ」
「じゃ、戻っておりやす。して先生は」
「う。……おれか、おれも」
と、うッかりしていた賛之丞は、突っ張っていた肩を急にゆすぶって、不用意に立ってしまった。
「裏庭の木戸が手薄ですから、先生は、あそこを見てやっておくんなさい。伊之、勘八、半次、源三なんかがそこにいる筈ですから」
「左様か――心得た」
と賛之丞は、そこにいる者達へ、敢然と言ってみせて、さて、溜塗の長い鞘を、やおらという風に腰へ差した。
八
お稲は、どこからか抜け廊下へ這入って、鼻を抓まれても分らないような暗闇を、手さぐりで探って行った。
と、肩に突き当った所がある。
今日は、留守でいないが、その上は、鮎川の仁介の部屋としてある。そして今お稲が探っている所は、何かの場合には、あの床脇の戸棚から遁れるようにしてある隠し道だ。