Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
――彼女は、半刻ほどそこに立っている間に、戸狩の若い男を幾人も情人にして肉慾に生涯して土へかえったお千代後家のことなどを、ぼんやりと考えていた。そして可愛らしい口を開いて欠伸をした。
やがて、墓地の中で、若い男が腰をのばした。その足音が近づいて来たので、振りかえると、
「おお、ひどい。もういいぜ」
と男は、耳の穴へはいった土をほじりながら、抱えて来た壺みたいな物を、お芳の足元へ大事そうに置いた。
「腰が痛てえ」
「いやな臭いがするのね」
「気のせいだよ。死人なんてものは、きれいなものさ。生きてる奴のほうが、よっぽど、穢え」
「馴れているんでしょう、七さんは」
「親代々の仕事だからな。おら、ちょっと顔を洗って来よう、むこうの沢で」
「手拭は」
「貸してくんな。へへへへ口紅がついているぜ」
七之助は、戸狩村の煙火師だった。こんな山里に代々住んでいても、煙火師渡世の者は、みんな遊び人肌で、いなせで勘がよくって金ぎれいで、女に好かれた。
手拭をつかむと、七は、沢の下へ駈け出して、烏の行水みたいに、じゃぶじゃぶと、顔や、手や、足を洗った。
「死人の臭いってやつは、水で洗うと、妙に生きかえって来やがる。