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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

押し伏せるようにいっておいて、

「――今夜見えたら、あの男には、少し拙者からいい渡しておくことがある。各※(二の字点、1-2-22)には、どしどし用談を進ませて下さい」

と、例のわがままな筆法で、後の進行は、同僚の仕事に転嫁してしまった。

「承知しました」

と、相役の四名は、厚ぼったい帳面を何冊もひろげ出した。――硝石購入帳、煙火道図式、西洋薬品記録、仕上入倉簿、職方日誌、賃銀貸出覚え。

銘々、一冊ずつ、手にわける。

筆とことばと、そろばんと秤の目と、門外漢にはわからない材料の授受だの、調合の研究だの、三河から帰って来た密偵の者の報告だの、煙火師対お狼火方の専門的な相談などが、およそ一刻あまり何ごとも忘れてガヤガヤとつづいた。――それがすむと、初めて酒が出る順序になって、話は依然として仕事のことでも、だいぶくつろいだ空気になり、時々、冗戯が交じる、洒落が出る。笑い声が爆発する。

頃をはかって、お芳が、すがたを見せる。

いつも木綿着物ときまっている彼女も、今夜は、夕顔の花ぐらいにうすく白粉を襟に刷いて、山繭織りを濃い紫に染めたよそゆきの小袖を着て下婢をさしずしながら、一同へお酌をして廻った。