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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

村は夏めいて来た。この山国に新緑を見るともう五月の中旬であった。

二人の手伝いが休んだので、慎吾も、仕事小屋にぼんやりしていたが、一昨日、窓から投げこんで行ったお芳の手紙を出して、読み直していた。

彼女の手紙は、その前の手紙よりも、自分への好意をだんだん明らかにしていると慎吾は思った。ふたりの男の智能や身分を比較してみれば、どんな無考えでも、女が自分のほうへ歩み寄りたがっているのは当然だと考えた。

「果し合いをする前に、もうお芳はこっちのものじゃないか」

ほくそ笑まれると同時に、何だか、禁断の実を盗んでいる気もする。

それに近ごろ、他の同僚たちが、暗にお芳との恋を諫めだてする口ぶりなのが、よけいに慎吾を依怙地にさせた。そういう捻けかたは彼の性格から何事にも首を延ばすことであるが、こんどのお芳のことには、非常に強い。

「会いたくなったなあ」

ぶらりと外へ出た。珍しく着流しに草履ばきで、日蔭を拾った。

教来石兵助の家を訪ねてみると、お芳はいなかった。湯田中まで行ったからまだ帰るまいという。兵助老人を相手にしばらく世間ばなれのした話をしていたが、こんどのことは絶対に聞かさぬことにしてあるので、長居もできない。