Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
その土台柱をかぞえて、何本目かを撫で廻すと、小さい土掻と、籠があった。彼はその土掻の刃で、土の上かわを三寸ぐらいずつ削ぐように掻いて、籠へ土を盛りこんだ。
「七の火薬はべつだぜ」
と、仲間の者も、常に彼の出す強力な火勢には驚いていたが、その硝石の宝庫は、この古家の床下だった。無論その土は、彼の手で加工され洗滌されてから全くべつなものに変質されるのではあるけれど。
一かごとると、べっとりと汗をかいた。肱を曲げて汗をこすると、土と蜘蛛の巣が顔にこびりつく。
「おや?」
ここへは、何度も土を採りに来たが、今までにない現象をそこで見た。――すぐうしろの土台柱に、床板の割れめから、ほんの微かではあるが、明りが射している。
花火の妖精さえ信じている七だった。ぞっと寒いものを背すじに這わせて、蒸暑い体を冷たい土に寝せていると、ホホホと女が笑う、男が笑う、そして低くなり高くなり、淫らな声がてんめんと耳をこそぐって来る。
「? ……」
七の眼は闇の中に、梟のようになっていた。
「人間じゃない、人間の笑い声じゃない。……貉かな?」
いや! 彼はもっと慄然とする想像にたどりついた。