Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
と、煙火師のほうへ向ってたずねた。この二人は、果し合いの条約にもゆるされて八寸玉の製作を手つだった男たちである。
「もう先へ送っておきました。場所は決めた通り、笄の渡舟から二町ばかりてまえのほうで」
「ご苦労だった。七のほうは、来ているか」
「あいつは河原ではやを釣っていましたぜ、待ちくたびれているんでしょう」
「ふーむ」と冷笑をゆがめて、
「じゃお芳どの、そなたは近くまで行ったら、舟にのって川の中の丘にやすんでいるがいい。なに一人じゃない、丘のほうには拙者の友人を廻してあるのだ」
河原を辿って、上へ、五、六町も行くうちに、空はとっぷりと夜になった。わりあいに足元の明るいのは、水面から十尺ばかりぼうと青く見える水明りの加減であろう。
初夏ならばこの辺、佐久地方の高原から流れて繁殖した月見草の黄色さで夜も明るい。今秋草は川洲のどこにも伸びていた。
ピピピ、ピピピ、と河鹿の啼く闇がなんとなく気をひき締める。――と小舟が待っていた。慎吾は何かささやいてお芳だけをそれにのせて、ひろい河心の丘へ送ってしまった。
半町ばかり先に、蛍ほどの赤い火が見えだした。七は、煙草をすいながら戸狩の若者七人ばかりと一緒に、草叢に腰をすえこんでいた。