Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
それが、一角なのです」
「お八重は、自分の姉と、そうした悪縁のある一角と知りながら、なぜまた、あんな男に引きずられて……」
「だから、私にも、お八重姉さんの気持はわからない。なん度、泣いて、意見をしたか知れませんが」
「血だなあ」
丈八郎は、ほっと、重い吐息をついて、
「――争えないものは、血すじだ、親から生みづけられている人間の血の運命だ。――お信、その釵はここにあるか」
「いいえ、お八重姉さんは、お墓から、それを見つけて来た日から、肌身に離したことはありません」
「そうか。……いやそうだろう。あの銀の釵なら、二女の母親が、若い頃に挿していた品、その釵が、淫奔な血とつき纏って、お里に愛され、お八重にまで持たれて行った――怖ろしい気がする」
「兄様。いま仰っしゃった二女の母とは――それは、私たちのおっ母さんとはちがうのですか」
「亡父の過失。わしも、深くは知りとうないし、きょうまで、姉妹の気持にけじめは持たなかったが、異母胎じゃという事は、さる人から、聞いていた。――その母という人は、美人ではあったが、癆咳で、若死にをしたという話も……」
夜具の襟が、さめざめと、ふるえるのだった。