Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
……ああ、だが考えてみると、その種は、あっしが蒔いたようなものだ。実あ、皆さんの前ですが、ふだんからお喜乃さんの心ばえに感服して、さるお武家から、大金を戴いてやったんです。それをゆうべ届けたんで、盗ッ人のやつに見込まれたのかも知れねえ」
「長屋中で、どうにかして上げるつもりではおりますが、何しろ、幾ら寄っても、貧乏人と貧乏人、お寺への心づけさえないんでしてね」
「心配しなさんな」
すぐ財布を解いて――
「一両と、小粒を少しばかり持ち合わせていますから、これで万端」
「あ、親方さん……」
棺桶のまえに泣き伏していたお喜乃が、あわてて、それを押しやって、
「もう、そんな御心配は」
「お喜乃さん、飛んだことだったなあ。おめえの心のうちは察しる」と、ほろりと声を落して、
「だが、力を落しなさんなよ。及ばずながら、後々は、どうにでも、相談相手になってあげる」
「ほんとに、御親切な親方だ」
と、長屋の人々は、いい囃すように――
「どうぞよろしくお願いいたします」
「ご検視は」
「はい、今し方、すみました」
「何か、泥棒の、証跡になるような物は」
「窓の外に、手拭が一本落ちていただけだそうで」