Japanische Klassiker mit Furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme
「お喜乃の親父が殺されたんで」
「殺された。――病人のはずじゃないか」
「押込みに斬られたんです。ゆうべ無理に百両置いて来たのが、かえって仇になっちまいました。――だが、親切の効き目は、こういう時じゃねえでしょうか」
「もう百両出せというのか」
「何しろ、盗まれちまったんで」
「ない」
と噛んで吐くように、
「月でも変って、蔵米でも払わなければ、拙者も、一文もない」
ひどく不機嫌な顔いろに、仁吉は、口をつぐんで、
「へ……」
と、頭を下げた。
「恥をいわねば分らんが、実は、拙者も、盗賊に遭って、文庫の金を悉皆攫われてしまった」
「えっ、お屋敷へも」
「む。貴様に送られて帰った晩だ」
「旦那、あっしじゃありませんぜ」
「誰がそちだといった。――何しろ当惑している」
「それや御災難でございましたね。下手人の見当はついているんですか」
「分らん。雑巾で拭いて行ったようだ」
「――じゃ、どうしましょう、お喜乃の方は」
「どうとは?」
「ここんところで、もう一度、金をやるかやらないかの思案で」
「金をやらずに、お喜乃を手に入れる工夫をしろ。来月になれば、どうかなろうが」
「じゃ、やっぱり、新町へ突っ転ばすに限りますね。