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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lesen Sie 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.609 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

どうしても、覚えのある気はするが、記憶をつかむ努力に疲れて、眼を反らした。

「おや? ……」

すると、ふとまた、心蓮はその眼をみはった。彼女の襟脚から二尺ほど上の仏壇の中に、奇異な物を見出したのだ。血痕でもついたのがそのまま斑に錆びたかのような十手と、一すじの捕縄とが、掛かっているのだ。

ぞっと、彼は肩をすぼめて、家の中を見廻しながら、

「もし――」と、女へいった。

「はい」

針刺しへ指をとめて、

「お茶でございますか」

「いいや、つかぬことを伺うが、床の御風雅、御主人は、俳諧でもおやりかの」

「左様でござります。京都の夜半亭の社中から出た月杖という俳諧師。あなた様も、おたしなみでございますか」

「何の、一向に無風流者。父が狩野派の貧乏絵師なので、幼少のころ、ちとばかり、画道は師匠につきましたが」

「おや、そうですか。ちょうど、今夜父が出かけました庵寺の運座も、京都から遊歴に来た絵描きさんのためだといっておりましたが」

「ほ。何というお方で」

「丸山応震とか――」

「応震? 聞いたような……」

「応挙の御子息だとか。――あの応挙は惜しいことに、お亡くなりになりました」