Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
昼休みの時間に、僕は教室にひとり残って、小山内薫の「芝居入門」を読んでいたら、本科の鬚もじゃの学生が、のっそり教室へはいって来て、
「芹川は居らんか!」と大きい声で叫んで、「なんだ、誰も居らんじゃないか。」と口をとがっらせて、「おい、チゴさん。芹川は、どこにいるか知らんか?」と僕に向ってたずねるのである。よほどの、あわて者らしい。
「芹川は、僕ですけど。」と僕は、顔をしかめて答えたら、
「なんだ、そうか。しっけい、しっけい。」と言って頭を掻いた。無邪気な笑顔であった。「蹴球部の者だがね、ちょっと来てくれないか。」
僕は校庭に連れ出された。桜並木の下で、本科の学生が五、六人、立ったりしゃがんだり、けれども一様に真面目な顔をして、僕を待っていた。
「これが、その、芹川進だ。」れいの、あわて者が笑いながらそう言って、僕を皆の前へ押し出した。
「そうか。」ひどく額の広い四十過ぎみたいに見える重厚な感じの学生が、鷹揚にうなずいて、「君は、もう、蹴球をよしたのかい?」と少しも笑わずに僕にたずねる。僕はちょっと圧迫を感じた。初対面の時でも少しも笑わずに話をする人は、僕にはどうも苦手だ。