Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
女のひとはそれを持って奥へ行ったが、ながい事、出て来なかった。なんだか不安だ。山寺にひとりで、ぽつんと坐っているような気持だった。
突然、声たてて笑いながらあの女のひとが出て来た。
「はい、ご返事。」前の便箋とはちがう、巻紙を引きちぎったような小さい紙片を差し出した。毛筆で書き流してある。
春秋座
それだけである。他には、なんにも書いていない。
「なんですか、これは。」僕は、さすがに腹が立って来た。愚弄するにも程度がある。
「ご返事です。」女は、僕の顔を見上げて、無心そうに笑っている。
「春秋座へはいれって言うのですか。」
「そうじゃないでしょうか。」あっさり答える。
僕だって春秋座の存在は知っている。けれども、春秋座は、それこそ大名題の歌舞伎役者ばかり集って組織している劇団なのだ。とても僕のような学生が、のこのこ出かけて行って団員になれるような劇団ではない。
「これは、無理ですよ。先生の紹介状でもあったらとにかく、」と言いかけたら、青天霹靂、
「ひとりでやれ!」と奥から一喝。
仰天した。いるのだ。御本尊が襖の陰にかくれて立って聞いていたのだ。びっくりした。ひどい、じいさんだ。