Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme

Aozora Bunko

六

「えっ、浅野家の早打ちが?」

思い当る事があるらしく、幸右衛門がこう緊張を眸に見せたとき、玄関の方で、養父の十内の声がした。

「あっ、養父が帰って来た」

出迎えに立つと、それを機に、お稲もすぐ帰って行った。もっと、訊ねもし、語りもしたい思いは、もちろんお互いにいっぱいだったが――。

三

常と少しも変りのない十内であったが、帰るとすぐ、

「於丹、茶漬をくりゃれ」

と、午の食事を求め、

「ついでに、弁当をふたつ、調えておけ」

と、いいつけた。

「はい」

と、丹女は、膳ごしらえに、すぐ台所へ入った。――良人の唐突ないいつけに対しても、なぜ? とか、何しに? とか云うような問いは、良人から打明けられない限り、諄くは訊かないことが、この家の慣わしであった。

(――云うにも云えぬ、公の場合もある。男の肚というものもある。告げてよい事なら元より告げるが、語らぬことは、良人を信じて、自然、分って来る日なり、語れる日まで問わぬがいい)

もう三十年も前、ここへ嫁いで来たときに云われたことばを、その通り守って、その通り信じ合って、少しも疑いというものをその間に抱き合わずに来た夫婦である。