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Japanische Klassiker mit Furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme

Aozora Bunko

「恐ろしい身の破滅の一歩だ!」という観念は、消えるどころか益々旺盛になって来た。

私はとうとう会社をやめてしまった。然し近頃は彼女と日夜一しょに居ることが、何となく苦しいように思えるので、午前に注射を受けに行くと、午後には散歩に出かけたが、彼女は私について来たいとも言わなかった。ある夜私は、晩飯を日本橋の某料亭ですまし、一杯機嫌でいい気持になったので、彼女をびっくりさせてやろうと、音のせぬように入口の格子戸をあけ家の中へあがって、ぬき足で、茶の間の入口まで来ると、彼女をおどしてやろうと思った私の全身は氷を浴びせかけられたかのように其の場に立ちすくんだ。

彼女は、丁度、犬がやるように、火鉢の中に頭を突き込んで、灰をべろべろ嘗めて居たのである。

私は恐ろしさに、踵を返して逃げ出そうとしたが、その時彼女は顔をあげて、私の方を見ながら別に驚いた様子もなく、手巾で口を拭って言った。

「まあ、いつ帰って来たの? わたし近ごろ灰や泥がたべたくて仕様がないのよ。妊娠したんだわ」

私はこの言葉をきいてはっと思った。なるほど、妊娠の際には所謂異嗜が起って、平素口にしないものを食べたがることがある。