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Japanische Klassiker mit Furigana

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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme

Aozora Bunko

力をこめて、私が彼女を引き離すと、彼女はにやりと笑ったが、その時彼女の口元が三寸ほど前へのびて来て、犬そっくりの口元になった。

火鉢に突き立ててあった裁縫用の鏝をつかむが早いか、私は力をこめて、彼女の額に打ち下した。その途端、血のようなものが、ぱっと飛び出したようであるが、不思議にも血は流れ出ず、彼女が一言もいわずに仰向きにどたりとたおれると、始めて額の疵からどす黒い血が畳の上へ流れ出た。

はっと我にかえって、よく見ると彼女の顔はいつもの彼女の顔である。死んだ人間の顔に外ならない。私は私の早まった行為をくやむ傍ら、不思議にも安心に似たような気分が湧き、同時にまた幾分か理性が働きかけたようにも思った。

私は彼女の死体を風呂桶の中へ運んで蓋をし、それから座敷兼茶の間へ戻ると、驚いたことに、彼女の額から出た血溜りが、丁度紅い絵具で畳の上にわざわざ描いたかのように、一疋の吠えて居る犬の形を作って居た。これを見た私の全身から、たらたらと冷汗の流れ出るのを覚えた。早速バケツに水を汲んで来て、先ずその呪うべき犬の形を拭き取り、それからあたりを見まわしたが、意外にも血溜りの外には、血のとばっちりは一つもなく、畳の上にも、障子にも襖にも、血痕らしいものはさらに見つからなかった。