Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
序の章
一
序の章
一
「岸本君――僕は僕の近来の生活と思想の断片を君に書いて送ろうと思う。然し実を言えば何も書く材料は無いのである。黙していて済むことである。君と僕との交誼が深ければ深いほど、黙していた方が順当なのであろう。旧い家を去って新しい家に移った僕は懶惰に費す日の多くなったのをよろこぶぐらいなものである。僕には働くということが出来ない。他人の意志の下に働くということは無論どうあっても出来ない。そんなら自分の意志の鞭を背にうけて、厳粛な人生の途に上るかというに、それも出来ない。今までに一つとして纏った仕事をして来なかったのが何よりの証拠である。空と雲と大地とは一日眺めくらしても飽くことを知らないが、半日の読書は僕を倦ましめることが多い。新しい家に移ってからは、空地に好める樹木を栽えたり、ほんの慰み半分に畑をいじったりするぐらいの仕事しかしないのである。そして僅かに発芽する蔬菜のたぐいを順次に生に忠実な虫に供養するまでである。勿論厨房の助に成ろう筈はない。こんな有様であるから田園生活なんどは毛頭思いも寄らぬことである。僕の生活は相変らず空な生活で始終している。