Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
あだかも亡くなった人にまで別れを告げるかのように。
「これが母さん?」
泉太の方が戯れるように言って、側に居る繁と顔を見合せた。
「そうサ。これがお前達の母さんだよ」
と岸本が言うと、二人の子供はわざと知らない振をして噴飯してしまった。
岸本は南向の部屋へ行っていそがしく出発前の準備に取掛った。書くべき手紙の数だけでも多かった。部屋には旅の鞄に詰めるものが一ぱいにひろげてあった。諸方から餞別として贈られた物も、異郷への土産として、出来るだけ岸本は鞄や行李の中に納れて行こうとした。
「明日は天気かナ」
と言いながら、岸本は庭に向いた硝子戸の方へ行って見た。雨戸を開けると、暗い樹木の間を通して、夜の空が彼の眼に映った。遠く光る星もあった。寒さと温暖さとの混合ったような空気は部屋の内までも流れ込んで来た。
「節ちゃん、春が来るね」
と岸本は旅支度の手伝いに余念もない節子の方を顧みて言った。節子は電燈のかげで白い襯衣の類なぞを揃えていたが、叔父と入替りに雨戸の方へ立って行った。
「今日は鶯が来て、しきりにこの庭で啼いていましたッけ」
と彼女は言って見せた。
遅くまで人通りの多い下町の方から移って来て見ると、浅草代地あたりでまだ宵の口かと思われた頃がその高台の上では深夜のように静かであった。