Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
八十九
「実は僕はまだ今朝から食いません」
岸本は眼を円くして岡の方を見た。旅に来ては互に助けたり助けられたりする間柄で、こんなことはめずらしくは無かったが、あまりに率直な岡の調子が岸本を驚かした。彼はこの話好きな画家が「飢」を側に置いて、「恋」に就いて語っていたことを知った。
「岡君も有る時には有るが、無い時にはまた莫迦に無い人だねえ」と岸本は心易い調子で言って笑った。「まあ、どうにかしようじゃないか。そんなら君はシモンヌの家で昼食でもやりながら待っていてくれ給え。僕は直ぐに後から出掛けて行きますから」
岸本の旅も足りたり、足りなかったりであった。それは高瀬のような旅とも違って、多くの月日の間には故郷の方の事情の変って行くところからも来、巴里に来て出来るつもりの仕事がとかく果せないところからも来ていた。
「外国に来て困るのは、ほんとに困るんだからなあ」こんなことを独りで言って見て、一歩先に出て行った岡の後を追った。
シモンヌの家へ行って見ると、例の奥まった部屋の片隅には亭主から給仕まで一緒に集って、客商売の家らしく可成遅い食卓に就ていた。シモンヌはますます可愛らしい娘になって行った。