Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
百八
と牧野は画家らしい観察を語った。岸本はこの人と連立って枯々とした並木の間を影のように動いた。石造の歩道を踏んで行く自分等の靴音の耳につくのを聞きながら、今は巴里にある極く僅の日本人の中の二人であることをも感じた。
百八
「早く英吉利を切揚げたまえ。この沈痛な巴里を味いたまえ」
こう岸本は高瀬へ宛てて手紙の端に書いて送った。倫敦にある高瀬からその後の様子を尋ねてよこした時の返事として。
この周囲の寂しさにも関らず、岸本はもう一度自分の部屋の机に対って見た。灰燼の巷と化し去ることを免れた旅窓の外に見える町々も、変らずにある部屋の内の道具も、もう一度彼を迎えてくれるかのように見えた。ピアノを復習う音が復た聞えて来た。例の無心な指先から流れて来るようなその幽かなメロディばかりでなく、床を歩き廻る小娘らしい靴音までが階上から聞えて来ていた。
心の悲哀を忘れるために学び始めた新しい言葉の芽も一息に延びて来た。読もう読もうとしても読めずに蔵って置いた書籍を取出して見ると、何時の間にか意味が釈れるように成っていた時は、彼は青年時代の昔と同じような嬉しさを感じた。大きな蔵の中にでも納ってある物のような気がしていたラテン民族の学芸の世界は遽かに彼の前に展けて来た。