Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
岸本は水を打ったようにシーンとしたこの町の光景を自分の部屋から眺めて、数月前よりは反って一層胸を打たれた。彼はリモオジュから帰って来てから以来、一日は一日よりこの空気の中へ浸って行った。激しい興奮と動揺との時は過ぎて、忍耐と抑制との時がそれに代っていた。
岸本は自分の部屋を見廻した。戦争以前よりはもっと濃い無聊がそこへやって来ていた。
「ああ、復た始まった」
とそれを思うにつけても、よく目的もなしに町々を歩き廻り、寄りたくもない珈琲店へ行って腰掛けたりするより外に時の送りようの無いような、その同じ心持が復た繰返し起って来ることを忌々しく思った。窓から射して来ている灰色な光線は、どうかすると暗い部屋の内部を牢獄のように見せた。周囲が冷い石で繞われていることもその一つである。寝る道具から顔を洗う道具から便器まで室内に具えつけてあることもその一つである。親戚や友人や子供等から全く離れていることもその一つである。訪れるものも少なく、よし有っても故国の食物の話や女の話なぞに僅かに徒然を慰め合うのもその一つである。全く外界に縁故の無いのもその一つである。信じ難いほどの無刺戟もその一つである。