Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
百二十六
こう言いながら勝子は父親の手に引かれて行ってしまった。彼はそれを自分の身に経験したばかりでなく、彼の周囲にあった友人の場合にも経験した。市川のような賢い青年であっても、情人の姉なり親戚なりに経済上の安心を与え得なかったものは失敗した。そして日本橋伝馬町の鰹節問屋に生れた岡見は成功した。この事実は彼の若い心に深い感銘を刻みつけた。愛の為すなきを悟ったのは実にその時であった。
小竹や牧野の楽しい笑声が岸本の前で起った。国の方に細君を残して置いて来たというこの二人の画家はわだかまりの無い笑声に紛らして、岡の心を慰めようとしていた。一切を葬る時が来たと言わぬばかりに腕組して考えている岡を見ると、岸本は若い時の自分を眼前に見るという程ではないまでも、すくなくもそれに似よりの心持を起した――勝子がまだ生きている頃の彼と、岡とは、弟と兄ぐらいの年齢の相違であったから。
百二十六
若かった日のことを思い出すと同時にきまりで岸本の胸に浮んで来る青木の名は、よく彼の話に出るので、岡や牧野にも親しみのあるものと成っていた。彼はあの二十七歳ばかりで惜しい一生を終った友人の言葉を岡の前で思い出した。