Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
と女中はそんな戦時らしい言葉を残して出て行った。
岸本は黄色な布の蓋のはまった古めかしい感じのする洋燈を自分の机の上に移した。その燈火に対っていると、彼の心は容易に妻を迎える気に成らなかった結婚前の時へも行き、先輩の勧めで婚約した園子は曾て娘の時分に同じ学校を早く卒業したあの勝子から物を習った人であったことなどへも行き、初めて園子と一緒に小鳥の巣のような家を持った楽しい新婚の当時へも行った。
「父さん、私を信じて下さい……私を信じて下さい……」
あの園子の言葉、結婚して十二年の後に夫の腕に顔を埋めて泣いたあの園子の言葉は、岸本が妻から聞いた一番懐しみの籠った忘れ難い言葉であった。愛することを粗末にも考えまいとして、彼は苦い人生を経験した。彼は失ったものを取返そうとして、反って持っている者までも失った。園子が産後の出血で、殆ど子供等に別れの言葉を告げる暇もなくこの世を去った頃は、彼は唯茫然として女性というものを見つめるような人になってしまった。もし彼がもっと世にいう愛を信ずることが出来たなら、子供を控ての独身というような不自由な思いもしなかったであろう。