Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
九
ほんとに子供の時分には、私は泣いてばかりいるような児でしたからねえ」
心から出たようなこの妻の残して行った言葉も、まだ岸本の耳についていた。
岸本はもう準備なしに、二度目の縁談なぞを聞くことの出来ない人に成ってしまった。独身は彼に取って女人に対する一種の復讎を意味していた。彼は愛することをすら恐れるように成った。愛の経験はそれほど深く彼を傷けた。
九
書斎の壁に対いながら、岸本は思いつづけた。
「ああああ、重荷を卸した。重荷を卸した」
こんな偽りのない溜息が、女のさかりを思わせるような年頃で亡くなった園子を惜しみ哀しむ心と一緒になって、岸本には起きて来たのであった。妻を失った当時、岸本はもう二度と同じような結婚生活を繰返すまいと考えた。両性の相剋するような家庭は彼を懲りさせた。彼は妻が残して置いて行った家庭をそのまま別の意味のものに変えようとした。出来ることなら、全く新規な生涯を始めたいと思った。十二年、人に連添って、七人の子を育てれば、よしその中で欠けたものが出来たにしても、人間としての奉公は相当に勤めて来たとさえ思った。彼は重荷を卸したような心持でもって、青い翡翠の珠のかんざしなどに残る妻の髪の香をなつかしみたかった。