Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
十四
彼は上海まで帰って来ると、船の碇泊中にもう土地の新聞記者に見出されて、旅の話なぞを求められた。その時、国の方で自分を待受けていてくれるものは第一にそうした訪問者であろうということを感じないでもなかった。記者等はその日の夕刊に間に合せたいと言って、なるべく紙面を賑かにするような旅の話を彼の口から引出そうとした。記者の中には、彼が往きの旅で遇い、またこの還りの旅で遇う人達もあった。
「オヤ、髯が無くなりましたね」
と言って、彼の顔を忘れずにいた人さえも有った。
十四
漸くのことで、牧野と二人ぎりになった神戸の旅館の二階座敷に、岸本は恋しい畳の上の休息に有りついた。
「何だか風邪でも引きそうで、靴下だけはまだ取る気に成れない」
と岸本は牧野に言って見せて、三年の間寝る時より外にあらわにしたことの無い足だけを包んで置いた。宿屋の浴衣に靴下穿という面白い風俗で、二人は互いに足を投出して見た。清々とした畳の上は、寝ようと起きようと坐って見ようと勝手だ。岸本は部屋中ごろごろ転がって歩いてもまだ足りないほどの気楽さを味わった。試みに横になって、あおのけさまに自分の背中を畳に押しあてて見ると、船から上って来た時の心持が湧き上って来る。