Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
国へ帰って初めてのこの暑さは、岸本が倫敦出発以来の長い船旅から持越した疲労を引出したばかりでなく、どうかすると三年の仏蘭西の旅の間知らない人の中で殆ど休みなしに歩き続けて来たようなその疲労までも引出しそうに成って行った。張り詰めた神経の急激な静止と休息とから、彼の内部に潜んでいたものは一時に頭を持上げて来た。そして激変した土地の熱の為に蒸されるように成った。
何となく岸本の心は静かでなくなって来た。何と言っても同じ悲しい記憶に繋がれているような節子の為ること成すことは彼の上に働きかけた。不思議な低気圧が節子に来た時、それが幾日となく続きに続いた時、仮令彼にはあの節子の苛々とした様子が見ていられなかったとは言え、彼は与えるつもりも無い接吻なぞを与えたことを悔いた。三年の抑制と自責とは、彼をより強いものにしないで、反ってより弱いものにして行くかのようにさえ疑われて来た。世にも不幸な女と共に、どうやら彼はもう一度試されそうに成って行きかけた。
ある日、岸本はその界隈に自分だけ勉強の出来るような部屋でも貸すところがあらばと思って、それを見つけるつもりで家を出た。