Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんせい

新生

島崎 藤村

Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme

Aozora Bunko

節子はそれを見てくれと言いたげな表情をして、岸本だけをそこに残して置いて、自分は祖母さんや母親の居る部屋の方へ行った。大事そうにして彼女が蔵って置くものは、岸本の眼には別に変ったものでもなかった。それは彼が仏蘭西の旅に上る頃から以来節子に宛てて書いた手紙や葉書の集めたものだ。神戸から出したのもある。往きの航海の途中に出したのもある。巴里へ着いてから出したのもある。リモオジュの田舎から出したのもある。留守宅のことを宜しく頼む、子供を頼む、というような用事を書いた手紙か、さもなければ簡単な旅の記念に過ぎない。いずれも彼女を厭い避けようとした苦しく悩ましい心の形見でないものは無い。岸本はそれらの旅の便りを書いた時の自分の心持を思い出し、また節子からも神戸へ宛、巴里へ宛、かずかずの変な手紙を貰う度にそれを引裂いて捨てるか暖炉の中へ投げ込んでしまうかしたその自分の心持を思い出して、厭な気がした。節子の手箱の底には二枚続きの古い錦絵も入れてあった。三代豊国の筆としてあって、田舎源氏の男女の姿をあらわしたものだ。それを見ると、この手箱の持主がこんな僅な色彩に女らしい心を慰めていたかと思われるだけで、別に岸本は心も曳かれなかった。