Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
この岸本の言葉は節子をほほえませた。
その日の午後に、かねて岸本が巴里の客舎の方で旅の心を慰め慰めした古い仏蘭西の物語が節子との話の間に引出されて行った。旅から岸本が国の新聞紙へあてて送った折々の通信は節子の手で切抜にして保存してあったくらいで、その中に書いてあるアベラアルとエロイズの名は節子の記憶にも残っていた。まだ岸本はあの古いソルボンヌの礼拝堂などに結びつけて見て来た旅の印象を忘れることが出来なかった。不思議にも死んだ物語が彼の胸に活きて来た。あのペエル・ラセエズの墓地で見て来た古い御堂の内に枕を並べて眠っていた僧侶と尼僧との寝像が物を言うように成った。この二人は終生変ることの無い精神的な愛情をかわしたとした文句の彫りつけて掲げてあった白い大理石なぞはまだ彼の眼にあった。彼はあの御堂の周囲を廻りに廻って立去るに忍びない思いをして来たその自分の旅の心を節子に話した。あの御堂を囲繞く鉄柵の内には秋海棠に似た草花が咲き乱れていたことなぞをも話した。
「そうだねえ。添い遂げられない人達は直ぐ破滅へ急いでしまう。ああいう二人のように長く持ちこたえて行くなんてことは容易じゃないね」