Japanische Klassiker mit Furigana
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しんせい
新生
島崎 藤村
Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme
彼女が谷中から通って来る途中の暑さを思う心から、特に女の身体に合うように仕立てさせて置いたものであった。その涼しそうな単衣に着更えて岸本と共に時を送って行くことを彼女は何よりの楽しみにしていた。
その日は節子は躊躇した。それを岸本も看て取って、
「それもそうだね。今日は一ちゃんと一緒だね」
と言い直した。
節子は風呂敷包を持って岸本の居間の方へ来た。彼女は膝の上でその風呂敷包を解いて、岸本から贈った珠数の返礼を取出して見せた。
「好いのがありましたよ」
と言いながら節子が岸本の前に置いたのは、紐の色からして茶色に、さも男の持つ珠数らしく出来ていた。彼の方から贈ったものに比べると、珠のかたちも大きく、色も黒かった。
子供等は何事も知らなかった。唯三人の揚げる声が庭にある無花果の樹の下あたりから楽しそうに聞えて来ていた。岸本は節子が人知れず苦心してそういうものを見つけて来てくれたその心づかいを先ず嬉しく思った。
「どうだろう、俺に似合うだろうか」
と岸本は笑いながら節子に言って見せた。掌の上に載せて見た珠と珠の触れる音すら、何となく彼の耳に快かった。
やがて岸本が節子の贈物を首に掛けた時は、自分ながら妙に改まった心持に成った。