Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんせい

新生

島崎 藤村

Lesen Sie 新生 (しんせい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 334.815 Zeichen · 663 Bildschirme

Aozora Bunko

岸本嘉代とした黒い札の掲げてある部屋の中には、寝台が一つ壁によせて置いてあった。その上に見違えるほど病み衰えた嫂が横に成っていた。

「オオ、叔父さんか」

と嫂は訪ねて行った岸本を見て言った。部屋には嫂だけで、附添のものも見えなかった。

「姉さん、独りですか」と岸本が訊いた。

「昨夜は節も用があると見えて、家へ帰りましたよ」と嫂はさも寂しそうに言って見せた。

嫂は気は確かなものであった。岸本はこの病人の口からも、部屋へ見廻りに来る附属の看護婦からも、未だ手術のないことを聞いた。彼は既に医者側の相談にも立会って、これほど衰弱した病人の身体に手術を加えることの危険をも聞いていた。

「看護婦さん、叔父さんがお見舞に来て下すったに、お茶でも入れて進げて下さい」

こんな風に嫂は寝台の上で気を揉んで、粘って来る自分の口を枕許の紙の片で拭おうとするほど元気づいて見える時もあった。

しばらく岸本は寝台の側に腰掛けながら病人の顔を見ていた。彼の眼に映る嫂は、二度と谷中の家の方へ帰って行かれそうも無い人であった。古い病室らしい壁を背景のようにして、その側に寝ている嫂を見るのも寂しい感じを起させた。